ニュービートル

1994年フォルクスワーゲンは「ビートルの再来」として試作車(コンセプト1)を発表した。

デザインチームのヘッド、J・C・メイズは、次のように説明している。

「ポイントは過去と未来を結び付けることだ。消費者はコンセプト1に対してすぐに愛着心をもてるし、

信頼感を感じるだろう。またそればかりでなく、この車は最新技術も大きく取り込んでいる」。

さらにメイズの説明によれば、この試作車のデザインとイメージ・キャンペーンは、

以下の4つの原則に基づいているという。すなわち、「簡素、誠実、オリジナリティ。

これらは、フォルクスワーゲンの伝統として、重視されているものだ。

私たちは、フェルディナンド・ポルシェが設計者として伝説のビートルをデザインした時と

同じような観点からこの作業をスタートした。絶対的に必要なものとは何だろうか?

デザインや輪郭線のどんな要素が余計なのか?私たちは個々の幾何学的要素を選び出し、

現代的で調和のとれた外観をつくりだすように、それらをまとめ上げていった。コンセプト1は、フォルクスワーゲン自身を具体化したものなのだ」。

写真はAmazonより抜粋(リンクしています)

誰もが座りたくなったアーロン・チェア

ハーマン・ミラー社は以前は机用のイスはどれも同じよなものだった。

机用のイスは購買部または人事部の小姑たちが選び、購入するものであった。

CEO(最高経営責任者)でないかぎり、たいして発言の機会はなかった。

楽しいイスとそうでないイスの違いにも気付いていなかったかもしれない。

机用のイスの買い手は、安全で楽な物を探していた。

メーカーは、買い手の言うことに注意深く耳を傾きけ、安全で楽な物を作った。

パッとしない市場だったし、成果もパッとしなかった。1994年、ハーマン・ミラーは750ドルの

アーロン・チェアを売り出すという思い切ったことをした。

 そのイスは、見た目も働き働きもはるかに違っていたし、値段もべらぼうだった。

目にした人はみな座ってみたいと思い、座ってみた人はみなそのことを話したがった。

ハーマン・ミラーのデザイナーは、普通の購買担当者が安心して買うには高すぎることを

承知していた。それほど多くは売れそうにないことも分かっていた。

 それでも、ハーマン・ミラーはそれを正しく理解した。アーロン・チェアに座るということは、

その人が何をし、どんな立場にあるかを示すことになったし、会社がこのイスを買うということも、

同様のことを示すことになった。アーロン・チェアが売り出されて間もなく、セス・ゴールドスタイン―

サイトスペシフィック(初めてオンラインによる通販を扱った広告代理店)の創業者―は、

まさに彼の初めての投機資本の小切手を手に、まっすぐアーロン・チェアを1ダース買いになった。

それは、ウォールストリート・ジャーナル紙の一面で報じられた。 

 これは、大いに伝説的ではあるが、ほとんど成功していないバイラル・マーケティングの一例となる

新手をひねり出したという例ではない。マーケティングの投資をメディアではなく、製品に起こった

という例である。アーロン・チェアは、1994年の発売以来、膨大な数を売上、いまではニューヨーク

近代美術館の永久コレクションの加えられている。

写真はAmazonより抜粋(リンクしています)

結局、全ては結びついている―人、考え、モノなど・・・

この結びつきの質が、質そのものを決めるのだ。

by チャールズ・イームズ

After all, everything is tied - people, thoughts, things ... ...

The quality of this tie is,it decides the quality itself.

By Charles Eames

・・・万事は、他人の物事によって決まる

by レイ・イームズ

・ ・ ・  All things are determined by things of others

by Ray Eames

写真はAmazonより抜粋(リンクしています)

コンセプトを数値化

成功例1 QBハウス

「10分1000円カット」。

強みは10分カット、特徴は1,000円。もうこれ以上、具体的にできません。

秀逸な事業コンセプトです。理容業界の地図を塗り替えただけのことはあります。

 

成功例2 ココナラ

「知識・スキルを500円で売り買いできるマッチングサイト」。

知識・スキルを売り買いできるクラウドサービスは、珍しくありません。

しかし、500円は、ほかにはない特徴です。他社との大きな差別化となっており、

立ち上げから半年で会員数は4万人と、人気を博しています。

 

成功例3  メーカーズ鎌倉

「上質なYシャツを4,900円で販売」。

メーカーズ鎌倉では、対象顧客のビジネスマンがYシャツに躊躇なく払える

金額はいくらかを考えた結果、4,900円となりました。品質にもこだわりがあるため、

原価率は59%と高めです。しかし、価格を上げるつもりはありません。

その姿勢やこだわりが多くの顧客から支持を得て、今では広告も値引きも一切せずに

商品が売れていきます。

写真はAmazonより抜粋(リンクしています)

マーケティングは安物の宝石やガラクタであってはいけない。

マーケティングは販売に直結するものでなければならない。

マーケティングは芸術ではなく、科学なのである。

私は以前、フォーチュン500の中の1社のCEOをやっている友人に会った時、

彼に最近のビジネスはどうかと尋ねてみた。

彼は「我々の商品の認知率は、70%になった」と胸を張った。

私は、「それはすごいね。ところで、売上はどんな具合だい?」と尋ねてみた。

その途端、彼は、何かを思い出したかのように大急ぎで会社に戻っていった。

私が社外取締役を務めている企業の会議で、私はその企業のマーケティングが

何か根本的に間違っていると指摘した。

するとある役員が「セルジオ、違うんだよ。すべてはうまくいっている。

今はただ単に移行期間に過ぎないんだよ」と答えた。

それで私は、「移行期間?どこに向かってるんだい?もし全てがうまくいっているのなら、

どうして売上が前年比で30%も下がっているんだい?」と尋ねてみた。

するとみんな、口ごもってしまい、挙句には経済のせいだとか、気候のせいだとか、

ありとあらゆる言い訳が出てきた。なんということだ。

30年ほど前、私がメキシコのP&Gで働き始めた時、P&Gはちょうどアリエールとい洗剤を発売

したところだった。当時、メキシコでは洗濯機はそれほど普及しておらず、主婦はもっぱら手で

洗っていた。そうした主婦に対して、これまでのどの洗剤にも引けを取ることなく、

このパッケージに入った洗剤はは洗濯物をきれいに洗えるということを証明する必要があった。

そこで我々は、伝統的な洗濯バケツを使い、アリエールを注いだ途端、バケツが激しく回転して

泡立つという広告を制作した。ここで伝えたかったことは、アリエールを買えば普通の

 洗濯バケツが強力な電気洗濯機に早変わりするという、非常にシンプルでとても

わかりやすいものだった。

 当時、マーケティングに関わり始めたばかりの若造だった私は、広告のパワーに関して

ある種の畏敬の念に近いものを感じた。まさに、広告には人々の考え方を変え、

さらに人々に商品を購入させる力があった。こうした広告の成功もあって、アリエールは

全世界のP&Gの洗剤の中でベストセラーになり、現在もその地位を維持している。

 実際、タイドよりも売れているのだ。

自社ブランドをいかにポジショニングするべきかの検討を始める際には、

あなたの会社の強みと弱みについて徹底的に検討すべきだ。何が得意で、

何が最も不得意か。あなたの会社の強みは、会社の目標達成に役立っているか、

 それともあなたはそれを無視しているか。

答えがきまっている事を行うのは作業、自分で考え出す事は仕事。

セルジオ ジーマン Sergio Zyman
国籍
米国
専門
実業家
肩書
コカ・コーラ上級副社長
経歴
米国コカ・コーラマーケティングの顔”として知られ、
1980年代に“ダイエット・コーク”の成功などに寄与
のちコカ・コーラを離れたものの、手腕を買われ、
’93年同社CMO(営業最高責任者)として活躍。
’98年退社。2001年「タイム」誌か
デービッド・オグルビー、レスター・ワンダーマンとともに
“20世紀の三大広告人”に選ばれた。

出典|日外アソシエーツ「現代外国人名録2012」(2012年刊)現代外国人名録2012について | 情報

著書は以下の通り。

「そんなマーケティングなら、やめてしまえ!」

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「セルジオ・ジーマンの実践!広告戦略論」

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「そんな新事業なら、やめてしまえ!」

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「すべては『売る』ために」

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